こんにちは。
最近の外来患者様の「肥満の悪化、糖尿病・高血圧の悪化、心不全の悪化」が増えていますが、自粛生活による運動不足の悪影響が出始めているように感じます。普段は外出することで(意識していないようでも)全身をつかうのですが、家にこもっているとその何気ない筋肉の使用がなくなってしまいます。
人との接触は避けなければいけませんが、人の少ない道を散歩していただくのは問題ありません。帰宅時に手や顔を洗うなど、十分に気を付けて、でも十分に運動してください。

本日は運動のお話です

1日1個のリンゴは医者泣かせという『ことわざ』があります。
リンゴを食べることで、病気にならず、医者にかからなくてよくなるという意味です。
健康に良い影響を及ぼす可能性があるにしても、一つの食品にそんな魔法のような効果を期待するのはなかなか難しいと思います。この『ことわざ』で言うリンゴのように病気になるリスクを減らすことが出来る方法があるとすれば、その重要な一つは「運動」です。

▼私の専門の心臓を例にとってご説明します
もともと、心筋梗塞などの心臓の病気においては安静治療が基本だったようです(日本においては約40年ほど前まで)。心臓が悪くなっているのに、体を動かせば、心臓に負担がかかって悪化しそうな気がするからでしょうか。
ですが研究が進むにつれて、心筋梗塞の患者様も心不全の患者様も、病気を起こしてからできるだけ早く動いていただくこと、病状が安定してからも今後の病気の予防のために運動療法をすることの重要性が認識されてきました。たくさんの研究で、運動療法をすることによって心臓病患者様の再発や死亡率を減らすことが証明され、運動療法と患者様の生活指導・多職種からの医学的評価、指導などを組み合わせた『心臓リハビリテーション』が心臓疾患の重要な治療の柱の一つとなってきました。

なぜ運動療法が心臓の病気を減らし、症状改善することができるのでしょうか?

そもそもからだを動かすためには、体中に血が巡り、その血から供給される酸素や栄養を体の組織(筋肉)が利用することが必要です。

仮に、心臓の動きだけが悪い場合の問題を考えてみましょう。
心臓から送られる血が少なくなるので、筋肉に送られてくる酸素や栄養が少なくなってしまいます。
酸素や栄養が少なければ、もちろんからだは動きにくく、胸が苦しかったり、呼吸が苦しかったりするかもしれません。
でも、からだは心臓だけで動いているわけではありません。血液を運搬する血管や、血液から栄養を受け取る筋肉、それらが動くように命令する神経、すべてが機能して初めて動くのです。

心臓の病気の患者様の状態をよくするためには、心臓だけでなく筋力や血管などにも対策を考える必要があります。単純に考えても、心臓以外の部分がしっかりしていれば、心臓の機能低下をカバーすることができるということになります。
もちろん心臓や筋肉・血管・神経それぞれ連動しているので、一緒になって低下してしまうことも多く、心臓の機能不全から筋肉も変化してしまうことがあります。

そういった心臓病の患者様に対して、運動療法が良い効果を及ぼします!

運動をすることで、筋肉の異常や神経・血管の異常も改善する効果が知られており、心臓の働きまでもある程度改善する効果が指摘されています。
その結果、上に書きましたような、心臓病の再発や死亡率を下げることにつながっているのです。

具体的な運動方法は、それぞれの患者様の病状や体力・筋力によって異なります。
過度な運動はよくありません。むしろ病状が悪化します。
心肺運動負荷試験(CPX)という検査がありますが、普段はその検査をすることで、患者様それぞれの適切な運動量を決定(運動処方といいます)しています。心臓リハビリを普段されている方は、いつもしていただいてる運動程度の負荷で、続けていただくのが良いと思います。
運動処方をされたことがない場合は、(感染予防のため今はCPX検査は避けたほうが良いとされていますので)「ややきつい、軽く息がはずむ・汗ばむ」程度のウォーキングを30-60分(できれば週5日以上)していただくのがいいと思います。

運動する際の心得は

①準備運動、整理運動をちゃんとしましょう。
②疲れていたり・体調の悪い時には避けましょう。
③無理のない範囲で、軽く汗ばむ程度までにしましょう。
④汗をかいたら、水分補給しましょう。
⑤いつもしているような運動なのに苦しいような場合は、心臓の病気が進行していることがありますので、その場合は運動せずにまず医師に相談しましょう。

1日30分の適切な運動をすれば、『ことわざ』のリンゴのように、心臓病になる方・悪化する方は確実に減ります。私たち循環器科医の商売は上がったりになりますが、泣くときはうれし涙です。
運動のお話は大事ですので次回も続けさせていただきます。お読みいただきありがとうございました。

青木内科 青木聡一郎